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9月の記事一覧

●高級時計「ドルチェ」と「エクセリーヌ」を比較する

「ドルチェ」はメンズ、「エクセリーヌ」はレディス用のセイコー社製高級時計です。
 そのような商品コンセプトを、これらのネーミングがどの程度イメージとして表現しているかを見てみようと、音相分析をしてみました。
画像をクリックすると大きくなります。
 (注) 青い棒グラフの読み方
 濃い青・・・「活力感、若さ、シンプル感、現代感」など、明るさや活性感などプラス方向を向く表情語。
 淡い青・・・「高級、優雅、落ち着き、安定感」など、静的または非活性的なマイナス方向の表情語。
 中間の青・・・プラス、マイナスどちらにも機能する表情語を示します。
 「ドルチェ」では、表情解析欄の上位に優雅感、高尚さを表す薄青色の棒グラフが並び、続いてメカニックで男性的な雰囲気を作る「明るさ」、「シンプル」、「動的」、「活性的」、「軽快感」、「強さ」などの表情語が並んでいます。
 また、男性用高級時計らしいムードをフォローするように情緒解析欄でも「人肌のぬくもり感」、「あいまい感」、「クラシック感」、「神秘感」などが見られます。
次に、レディス用高級時計「エクセリーヌ」を見てみましょう。
 表情解析欄では高点部分に、機能性や実利性の高さを表す濃青色の表情語が並んでいますが、女性用高級時計には欠かせない薄青色の表情語は下位のところにわずかにあるだけです。
 この語に女性ムードがないというと音相感覚をお持ちの方は不思議に思われるかもしれません。
 たしかにこの語は、摩擦音、鼻音、流音などを多く使って女性環境を作っていますが、明るさと勁性値(強さ)の高い無声破裂音系の無声化母音「k+u(ク)」と、響きの鋭い「イ」音の2連続(リー)があるため、穏やかな女性ムードはかき消されているのです。
 その結果、この語は「若い男女のいずれにも向く高級時計」のイメージになっているのです。

●大量案から優秀作を瞬時に選ぶ!
時間と費用を大幅に減らす「ラフ評価法」のおすすめ

商品名として表現したいコンセプトをあらかじめコンピューターに記憶させ、大量のネーミング案を入力すると、1語ごとのコンセプトの表現度を瞬時に取り出すソフト(OnsonicⅡ)を、㈱ダイスの技術協力により開発しました。
 そのようにして選び出した作品の高点部分のいくつかを、Onsonic vo1を使ってさらに精密解析し、専門家による感性審査を経ながら最終案を取り出すもので、このような分析をラフ評価法といいます。
 これまで多くのネーミング案を絞りこむ作業は、関係者の手作業で行っていたため、選ぶ人の好みや主観で優秀作が初期段階で捨てられてゆく例が少なくありませんでした。
 ラフ分析法を使うと、今の大衆が真に求めているものが洩れなく取り出せるよになったうえ、1語ごと本分析せずにすむため経費と制作時間を大幅に節約できるようになりました。
 商品コンセプトの細部の設定や、機械が取り出したデータのチェックなどには高度な専門知識と感性が必要ですが、それは当研究所の専門家がクライアントのご意向を伺いながら責任をもって行います。
 このラフ評価は総語数20語以上で、本評価の語数が5語以上の場合に行います。
ラフ評価に関する料金表
(注・いずれも消費税を含みません)

 ・コンセプト作成費 商品コンセプトが異なるごと 70,000円     
 ・ラフ分析料    50語で          1語    2,000円
             100語まで       1語     1,800円
             1,000語まで      1語    1,200円
             1,000語以上      1語     800円   
 ・本評価料     1語                 30,000円
 ・その他の料金 (省略)
(参考)料金例
(例1)コンセプト数1、ラフ評価数10語、本評価語 5語の場合
・・・・・・240,000円

(例2)コンセプト数1、ラフ評価数100語、本評価語 5語の場合
・・・・・・400,000円

(例3) コンセプト数1、ラフ評価数1,000語、本評価語10語の場合
・・・・1,570,000円

(例4) コンセプト数1、ラフ評価数5,000語、本評価語10語の場合
・・・・4,370,000円

●蝉(せみ)の鳴き声に見る、日本人の音相感覚

里山の近くにある我が家の夏は、蝉の声に始まり、蝉の声で終わります。
 日本人はいろいろな蝉の声を「ミンミン」、「ワシワシ」、「ニーニー」、「カナカナ」、「ツクツクホーシ」などのオノマトペを使って表現してきましたが、これらの音が私には、夏の炎暑を謳歌する蝉たちの思いのたけのメッセージのように聞こえてなりません。
 それが私限りのセンチミントかを見てみてみようと、音相分析をしてみでました。
蝉の鳴き声のオノマトペが持つ表情語





表情語


















シンプル、
明白さ
(A項)
 
躍動感、
進歩的
(B項)
   
新鮮さ、
新奇さ
(C項)
       
動的、
活性的
(D項)
派手さ、
賑やかさ
(E項)
 
軽やかさ、
軽快感
(F項)
   
若さ、
溌剌さ
(G項)
 
都会的、
現代的
(H項)
   
明るさ、
開放的
(I項)
   
合理的、
現実的
(J項)
   
個性的、
特殊的
(K項)
   
強さ、
鋭さ
(L項)
   
適応性、
庶民的
(M項)
清らかさ、
爽やかさ
(N項)
       
健康的、
清潔感
(O項)
   
暖かさ、
安らぎ
(P項)
       
安定感、
信頼感
(Q項)
          0
高級感、
充実感
(R項)
          0
高尚さ、
優雅さ
(S項)
          0
静的、
非活性的
(T項)
       
右側の合計欄を高点順に見てゆくと、
5ポイント・・・「活性的、庶民的」
4ポイント・・・「シンプル感(単純さ)、賑やかさ、若さ」
3ポイント・・・「躍動感、軽快感、開放的、特殊な感じ、鋭さ、清潔感」
などがあり、すべてのオノマトペが炎暑の夏を表すにふさわしい表情語でできているのがわかりますが、どの語にも例外なく「活性的、庶民的」があることと、行く夏の哀愁を思わせるツクツクホーシだけには「爽やか」「安らぎ感」「静的」の表情語があるのも、深くうなずけるところです。
 蝉の声をこのような優れた音で言語化した遠い昔の先人たちの冴えた音相感覚に、私はただ感服するばかりです。

●「マエ株」か「アト株」かで、会社のイメージは変わる

新しい社名を考えるとき、「○○株式会社か、株式会社○○か」は必ず思案の1つになるはずです。
 意味の上から捉えればどちらも同じように見えますが、音が伝えるイメージには大きな違いがあるのです。
 伝わるイメージの良し悪しは、何をおいても言いにくさ(難音感)があるかないかで決まります。
 言いにくさが一番多く生まれるのは、同じ種類の調音種が3音以上連続したときです。
 調音種とはことばの音を作る単位のことで、破裂音、摩擦音、鼻音、流音、喉頭音、破裂音、有声音、無声音など十種があります。
 ことばは音節のつながりでできますが、同じ種類の調音種が三音以上つながると「言いにくさ」が生まれ、音の流れが乱れるのです。
   「株式会社」を社名の前に置くかあとに置くかを決めるとき、とりわけ注意したいのが「言いにくさ」があるかないかの配慮です。
 「株式会社」の「カブ」と「大久保」の「クボ」はどちらも破裂音ですから、「大久保株式会社」にすると、「ク、ボ、カ、ブ」と破裂音が四連続するため言いにくいですが、「株式会社大久保」にすれば破裂音は2連続で終わるため難音感は生れません。
 また、「株式会社ハヤミ」では「シャ、ハ、ヤ」で摩擦音が3連続するため言いにくいが、「ハヤミ株式会社」にすれば摩擦音の連続は「ハヤ」だけで終わるため、言いにくさはありません。
 このように、ことばの音を調音種の段階まで下げて捉えてゆくと、誰もが気づかなかった新しい表現技法がいろいろ生まれてくるのです。
vvvvvvvvvvvvvv(以下は前号の原稿です)vvvvvvvvvvvvvv

●「カルピス」と「三ツ矢サイダー」
・・・新鮮さを持ち続けていることばの秘密

夏の清涼飲料として今でも人気の高い「カルピス」と「三ツ矢サイダー」。
 カルピスは88年前(大正8年)、三ツ矢サイダーは100年前(明治四十年)の命名ですが、いまだに新鮮で艶(つや)やかなさを感じることばです。
 そんなイメージがこの語のどこから生まれてきたのか見てみようと、両語の音相を分析してみました。
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表情解析欄を見ると、どちらもそのトップに清涼飲料には欠かせない「爽やかさ」を立て、それに続いて「安らぎ、明るさ、健康感、清潔感、シンプル感、若さ、躍動感・・・」などを捉えて、それぞれの商品がもつコンセプトを正しく表現していることがわかります。
 このようなイメージは、どういう音(音相基)から生まれたのか。
それはどちらの「有効音相基欄」にも、次の音相基が出ていることでわかります。
①無声摩擦音系多用・・・無声摩擦音系の音とはハ、サ行音とその拗音をいい、若さや爽やかさを作ります。
 ②無声化母音多用・・・・母音イまたはウが、無声音の子音の間に入ったときに生まれる音で、軽さや躍動感などを作ります。
 ③高調音種比・・・・・・表情を作る単位である調音種(破裂音、摩擦音、鼻音、流音、前舌音など)の種類の数が拍数に比べて多いものをいい、語に健康感、躍動感、爽涼感などを作ります。
 人々は、コンセプトにふさわしいこのような音を持つ語に接すると、深いところで共鳴しそれが「二次記憶」となってこころに記銘されてゆくのです。
明治、大正時代に作られて、今でも輝きつづけている商品名をあげてみました。これらを分析すると、やはりこの3要素を多く持っていることがわかるのです。
 正宗、 白鶴、 福神漬け、 三越、 高島屋、 ノーシン、 実母散、 毒掃丸、 即席カレー、 松屋、 ・・・

●新発売「ダブルドライ」を分析する

サッポロ・ビールがこの6月から、「ダブル・ドライ」を売り出しました。
 「大人の渇きを癒す」、「ズバッとキレる飲みごこち」が主なコンセプトのようですが、始めてこの語を聞いたとき、イメージの伝わり方に何かしっくりしないものを感じたので、それが何であるかを捉えてみようと音相分析をしてみました。
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表情解析欄を見ると、薄青色の棒グラフが出ているだけで、前項の「カルピス」などで多く見られた濃青色や、中間色の青グラフの表情語はありません。
 薄青色の表情語は、「安定感」、「高級感」、「優雅さ」、「安らぎ感」など高尚で静的なイメージを作るため、「ダブルドライ」のコンセプトの1つ「大人の雰囲気」は捉えていますが、「ビール」の表現に欠かせない「活性的、若さ、大衆性、軽快感」などの表情語がないため、「ズバッとキレる飲み心地」というコンセプトの表現がありません。
 それが初めの違和感だったのです。
 これらを表現するには「カルピス」や「三ツ矢サイダー」が捉えたと同じ音相基(無声摩擦音系、無声化母音、高調音種比)がやはり必要なのですが、この語の有効音相基欄にはこれらが出ていないのです。
 商品名には、商品がつくるイメージと、モノそのものが持つイメージがともに豊かに表現されていなければならないのです。

●ポイント数の「高い、低い」をどう読むか

表情語にでている数字は表情の量を示しますから、数字が高くなればなるほどその表情を明白に表現そた語であることを意味します。
 しかしながら、数字が高い語はすべて優れた語とはいえません。優れた語はその語のコンセプトを適切な音で表現しているかどうかで決まるからです。
 8月①号で述べたように、表情語に出てくるのはすべてポジティブなことばですが、その中に、必ずネガティブな概念も含んでいます。
 「明るい」という表情語はその裏側で「暗い」という概念も含みますから、表情語に出ている数字は「正」(明るい)と「負」(暗い)の「差の部分」と考えてよいのです。
 したがって、ポイント数が高い表情語は、反対概念の量が少ないことを意味しますから、そういう語は明白な方向性を持ってはいるが「単純で、奥行きや深みのない語」だといえるのです。
 即ち、ポイント数の高い語は、次のような面も同時に持っているのです。
表 情 語         高くなると生まれるネガティブ感
 シンプル・明白    →  単純、無思慮、表面的、深みがない
 派手、賑やか    →  キザ、騒々しい、目立ちたがり
 庶民的、適応性  →  凡庸、妥協的、ありふれた
 強さ、鋭さ      →  粗野、粗暴、乱暴、攻撃的
 高級感、充実感  →  思い上がり、虚飾的
 静的、非活性的  →  消極的、非活動的
またポイント数が少ない語は、1つ1つの表情語が正と負の両面をもっていますから、高級感や複雑さのある語といえるのです。
(注)これらについての詳細は小著(「日本語の音相」小学館スクウェア刊119ぺージ)をご参照ください。

●動物の鳴き声に見る日英両語の共通点

日本語と英語は、まったく無関係なことばのように思えますが、音の単位である「音素や調音種」のレベルで比べてみると、多くの共通点があるのがわかります。
 このことを、どの民族にも同じに聞こえるはずの動物の鳴き声のオノマトペで比べてみました。
動物の鳴き声に見られる音相的な共通点

日本語             英語
猫  「ニャーニャ-」  と  「ミューミュー」・・・・
【どちらも鼻拗音(ニャ、ミュ)と長音でできている。】

犬  「ワンワン」    と  「バウワウ」・・・・
【どちらも有声、両唇音(ワ、バ、ウ)と母音、アでできている。】

鶏  「コケコッコー」 と 「コッカドゥードゥルドゥー」・・・・
【どちらも破裂音(コ、ケ、カ、ド)と母音オ、ウ音でできている。】 

ひよこ 「ピヨピヨ」 と 「ピープ」(または「チープ」)・・・・
【どちらも無声、破裂音系(ピ、プ、チ)と、母音イ、オ、ウ音が多い。】

烏  [カーカー」  と  「コーコー」・・・・
【どちらも無声、喉頭、破裂音(カ、コ)ででできている。】
このように無関係のように思えることばでも、音相的に見てゆくとそこに大きな共通点があるのがわるのです。
だがこの傾向は、動物の鳴き声だけとは限りません。
 世界的に著名なブランド名は、どの国でも原語の音をそのまま使って、それぞれで高い人気を得ているのを見てもわかります。
以上から、ある言語音が作るイメージは、他の言語国でも同じようなイメージで聞かれている、者が多いことを意味します。
 それでは、言語によってイメージの違いを作っているのは何か。
 それは、それぞれの言語が持っている「音用慣習」の作用する部分のように思うのです。

●「日本語の音相」をお頒(わ)けします。

こちらは既に終了しました。