9月の記事一覧
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9月の記事
韓国・現代自動車の日本法人 ヒュンダイ・モーター・ジャパン が新車「ソナタ」の販売を発表しました。
『ソナタ』はすでに韓国では20年前にデビューし今回で5代目だそうですが、「冬のソナタ」にあやかってぺ・ヨンジュンのテレビCMも放映されているようです。
この語を分析すると、次の表情語が現れます。
あなたも体験版でおためしください。
トップの表情語「爽やか、清らか」と「庶民的、合理的」あたりでメインのイメージが作られ、それを「暖か、高級感、個性的、現代感」などがフローして全体のイメージが作られています。
ソフトムードの甘やかな方向性には矛盾する表現もなく、爽やかで美しい音の響きをもつ語ですが、ネーミングは音が美しいだけで効果が上がるものではありません。
優れたネーミグは、商品が持つ個性(商品コンセプト)を、それにふさわしい音によって表現されていなければならないのです。「ソナタ」は前記したよう に、、婦人用化粧品や装身具などには是非必要な音ですが、クルマという個性的商品の名には、このほかに是非表現しなければならないものがあるのです。
それは「動く感じ、躍動感(スピード感)、新鮮さ」などですが、分析表の表情語を見ると、それらがすべてゼロ・ポイントになっているため、クルマの雰囲気 がどこからも伝わってこないのです。これは韓国語と日本語の音用慣習の違いからくるものなのか、あるいは制作側に特殊な意図があったのか、その辺は20年 前のこの語の考案者に伺ってみなければわかりません。
(木通)
音相研究所が長年使ってきた「音相」とよく似た「音象」という語が最近一部で使われ瑠洋になり、当研究所では大変迷惑しております。
ホームページの記事の中にも『音象と音相は同じもののようだ。言葉の音象を知りたいときは、HP[日本語の音相]の中にあるOnsonic体験版を使うと良い』などの記事もありました。
だが、「音相」と「音象」とは全く別のもので、体験版を使って音象を取り出すことは出来ません。
音相理論は、「イケメン」、「緑のそよ風」、「鈴木美咲」などすべての音によって作られるイメージを科学的根拠をもとに取り出したものですが、音象は「が 行音は男性を興奮させる音」、「んの音は女性に好かれる音」、「パ行音は子供が好む音」など、個人の主観が中心で捕らえたものですから、一部の音の一部の イメージしか捉えることができません。
それに当たっていることばだけを集めると、なるほどと思う場合もありますが、当たらない例はそれ以上にあるのです。「音象」はことば遊びなどには使えても、明白な理論の裏づけが必要な本格的なネーミングやことばのイメージ解析などに使えるものではありません。
バブルが華やかなころ、我が家近くの私鉄の「野比」という駅名が「YRP野比」に改称されました。
YRPとは当時開設された 横須賀リサーチパーク という多くの通信事業会社の研究所群の略称ですが、ローマ字をナマで使った駅名は全国で始めてだと駅の人たちは誇らしそうに言っていました。
地名や駅名は、土地の歴史や文化の重みを担っているもので、それを企業が営業的意図のため勝手に作りかえる無神経もさることながら、「モダンでなければ ネーミングにならない」といった軽薄なバブル時代が見え隠れして、地元に人たちは今でもこの駅名に「YRP」をつけて言う人はおりません。
人々がこの語を口にしない原因には次の4つがあるようです。
1. 「わいあーるぴーのび」という音からは音相的に、何のイメージも生まれてこないこと。
(これは体験版でお確かめください)
2. 初めの部分『waiaa』で、母音が5音連続するため、非常な難音感(言いにくさ)
があること。
3. 意味を持たない記号(YRP)が5文字中3文字も入っているため、よそよそしさと
覚えにくさを感じること。
4. 『のび』(2拍)が「わいあーるぴーのび」(9拍)になったため、現代人の好む
「簡潔さ」が失われ、締まりのないダラダラしたことばになったこと。
大衆は、音のよくないことばは口に出すことを好みません。
だから、人気の出なかったネーミングには、大衆が口に出して言うのを嫌ったネーミングが多いのです。
そういう例をあげてみましょう。
・E電、DIY、JA、WOWOW、ビッグエッグ…
「大衆が進んで口にしたくなるようなことばを作る」…ヒット・ネーミングを生み出すコツが、こんなことばに隠れているように思うのです。
〔 目良卓氏とのメール対話 〕
【目良】
始めてお便りいたします。
私は国文学出身の教師です。短歌の響きに関心を持ち、ある結社で短歌を学んでいる者です
私が短歌の響きを研究し始めたのは、平成8年ころですが、短歌は口承文学ですから口に出しての美しさがなければならないと考えます。しかし、この分野には 文献が少なく、西原忠毅氏「日本語母音音感の統計的研究」を中心に、母音の音感を中心に石川啄木の研究を行っております。
歌集「一握の砂」の分析を終えたので、わたしの解釈をまとめて今年、一冊の本にまとめる作業をしておりました。
ある日図書館で、先生の「音相」(プレジデント社、1990)を見つけて驚きました。私の考えていたことを、このように科学的に分析し、緻密な理論として追及されていた方がおられたとは。
そして、今回HPで「日本語の音相」を知り、それを読んで、これまでの多くの疑問を解決する方法が明らかになりました。
自著をまとめる前に、ご本を読むことができたため、響きの世界を一段深く考える自信がつきました。出版をやや遅らせてでも、さらに納得いくものにしようと思っています。まことに有難うございました。
【木通】
お便りと、長年にわたる、母音を中心にしたユニークな啄木研究の論文を拝領、深くうなずきながら拝読しました。小著がお役に立てられたとか、たいへん光栄です。
子音と母音の関係については、音相理論では次のように認識しています。
日本語に使われている音の単位(音素)は、母音5、子音21ですが、ことばのイメージは母音のほか、子音からも複雑微妙なイメージが伝わります。
母音が作るイメージは大まかで方向的で漠然としたものですが、子音が作るイメージは方向性の中にある作者の内面や情緒など、微妙なものを伝えます。
また音相論の甲類表情表にあるように、母音が持つ表情の幅が大変広いため、中のどれを取り上げるかが問題ですが、その選択も子音音素との関係や、他の子音音素との響き合いの関係で決まりますから、子音のイメージ研究はどうしても避けて通れないものになるのです。
あなたのご経験とセンスなら、それをマスターされる日は遠くないと思います。ご健闘を切にお祈りいたします。
あじさい(紫陽花)という語が日本の文献に始めて現れたのは万葉集(西暦780年)のようで、この語を使った歌が2種ほどあるそうです。
この名はその後、七変化、天麻裏(てまり)、よびら、などとも呼ばれたようですが、明治以後再び万葉時代の「あじさい」に戻り、それ以後は「あじさい」で定着しています。
この花は、明るさや華やかさがなく、梅雨どきの雨に打たれた風情や、色変わりする不思議さなどが、日本人の心を捉えているのではないでしょうか。
音相を分析すると、「暖かさ、安らぎ感、静的、穏やかさ、高級感、優雅さ」が上位にあり、それに続いて「個性的、清潔感、明るさ」などを若干含んだ語であ ることがわかります。また、体験版以外の欄では「複雑度が高く、孤高感、寂しさ、神秘的、クラシック、情緒的」などが捉えられており、この花のすべての表 情を見事に表現したことばであることがわかります。
このことから、現代人と万葉の人々が全く同じ音相感覚を持って暮らしていたことがわかるのです。
この1200年の間、日本や日本人はいろいろに変化しましたが、日本人の中に流れている「音相感覚」という棒のような遺伝子の存在を私は感ぜずにはおられません。
(木通)
最近「ドンビキ」ということばが聞かれます。
駄洒落などを聞いたときのシラケた感じを言うときや、はなしに乗れない(引く)ようなときなどにも使われているようで、グループや場所の違いによって使われ方もまちまちのようです。
最近の流行語は、初めに珍奇で不思議な音のことばが探しだされ、それがいろいろな所に広がって勝手な意味づけが行われ、そういう中から意味とイメージの関係の優れたものが流行語となって広がってゆくという例が多いように思われます。
そのため流行語はあまり音相のはっきりしない語の方が、いろいろな使い方ができて都合がいいようで、そういう精か、流行語の音相を分析するとはっきりしたイメージをもたないことばが大変多く見られます。
「どんびき」もそんな1つといえましょう。
体験版で見ればお分かりのように、上位の表情語をどのように読んでもこれというイメージの浮かんでこないことばですが、このような語は、表情語を下位の方から読んでゆくと、はっきり見えてくることが多いのです。
この語の下位の表情語を見てみましょう。
「清らかさや爽やかさがなく、大衆性や合理性や現実性がなく、都会的、軽快感、活力感、清潔感」もすべてゼロ…
ここから、この語の表情がはっきり見えてくるではありませんか。
ことばの表情は一筋縄では捉えられないことがこんなところからもわかるのです。
なお、上から読んでイメージが捉えられない語は、
1.曖昧な意味をもった語 か、
2.良くない意味を持つ語(ネガティヴ語)に多いようです。
ついでに、そういことばの例をいくつか挙げておきましょう。
1.曖昧な意味を持つ語の例
「幻、夢、そろそろ、陽炎、曖昧」…
2.ネガティヴ語の例
「しらける、間抜け、ばかやろう、がめつい、憎らしい、自己中」…
高齢化時代を迎えて「老化、加齢に対抗する」ことばとして、最近「アンチ・エージング」ということばはが聞かれるようになりました。
エージングとは英語の「老化、加齢」を意味し、「アンチ・エージング」は「老化に対抗する」という意味のことばです。
アメリカでは「アンチ・エージング・メディスン(抗加齢医学)が1990年代から研究されているそうですが、わが国でも21世紀のキーワードとして、若返りの医学や薬学をはじめ、美容、デザイン、社会生活や食の分野などさまざまな方面で研究されてゆくことでしょう。
このことばには、何となく爽やかな気品のようなものが感じられますが、その原因がどこにあるかを調べてみようと音相分析をしてみました。
Onsonic体験版であなたもお試しください。
メインのイメージを作っている5位までの表情語として、「暖かさ、高級感、充実感、静的、高尚さ、優雅さ、安定感、信頼感」などがあり「静的」な音(薄色 の青線)を集めて高齢者がもつ豊かさや気品を出し、6位以下(中薄および濃い青線)で、「強さ、個性感、若さ、溌剌感、健康感」など若さや華やぎ感や活力 感などをつけ加えて、語の意味とイメージを調和させているのがわかります。
こういう雰囲気はどんな音から生まれるのか。それはこの表か らは見られませんが、正規の分析表をみると「気品や豊かさ」は「有声音と濁音の多用、マイナス輝性、多拍」から生まれたもんだし、「華やぎ感や若さ」は 「じゃ」(摩擦拗音)の1音とイ音の多用で得られたものであることがわかるのです。(木通)
(寄 稿)
初めてメールさせて頂きます。
私は日本文化系の学科に通う大学一年生で、進学するかどうかも決まらない時期から、日本語の「聞いたときの印象」に大変興味がありました。しかし、それをズバリ扱う本は殆ど無く、見つけたとしても難解な学術書で、それを読みこなせるほどの力も知識もありません。
自分なりに五十音表などを作って研究はしてみましたが、さすがに客観的な説明も出来ずに悶々としている折、書店で「ネーミングの極意」を見つけ、心から感動するとともにほっとしました。
このような、形も無く説明するにもなかなか難しいことを、非常にきちんと研究なさっている方がいらっしゃることに、本当に感銘を受けました。
今までは「なんとなく」で終わり、不思議に思うけれども自分で調べるのは難しかったことが、音相理論として出来上がってきている、そして、それを解り易く紹介する本やサイトも存在している。凄いことだと思います。この時代に生まれて良かったなあと心から思っています。
私は、拙いながら趣味で文章を書く人間です。たったひとつのフレーズの違いが、全く違う印象となって立ち現れてくる凄さと怖さを、今まで何回も体験しまし た。また、登場人物の名前ひとつにしても同じことがありますし、プロの作家の方の作品でも、「イメージどおりの名前だなあ」と作品に没入することもあれ ば、「どうしてこんな名前なのだろう」と馴染めないときもあります。
その不思議な現象を解く鍵が具体的に説明された「ネーミングの極意」と音相システム研究所さんのサイト、どちらも興味深く拝読させて頂いております。もしも叶うなら、私は大学で日本語の印象についての研究をしていこうと考えています。
また、「音」と、それを聞いたときに喚起させられる「色」の関係にも興味があるのですが、友人に尋ねたところ、「そんなことはない、音は音だ」と云われて しまいました。音からの色のイメージはごく個人的な体験から喚起されてくるものなのか、音相とは関係がないのか、その不思議を友人に説明できるようになる ためにも、音相について興味を持ち続けていきたいと思います。
夢と感動をありがとうございました。これからも、サイトの更新や新刊の発行など楽しみにさせて頂きます。
長々と失礼致しました。(扶美)