4月の記事一覧
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4月の記事
最近、当社の登録商標である「音相」とよく似た「音象」ということばが、ホーム ページなどで時々見られるようになり、50年間ことばの音のイメージ研究を行なってきた当研究所では非常な迷惑を蒙っています。 「音象」という語の起こりは、昨年「怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか」(黒川伊保子著、新潮新書)が発行され、テレビで著者の派手なパフォーマンスがあっ たのがはじまりでした。
この書の著者は、当研究所に3年ほどの間、時たま出入りしていましたが、深い研究 などをすることもなく、ことばが作るイメージを、アイウエオなどの単音単位で取り 上げて、それに当所が育てた果実の一部を加え、自分流の主観を入れたうえ、これは 「人の潜在脳の機能を説いたものだから文句なしに信じなさい」という内容のもの。 そのように説く以上、筆者として当然触れねばならない潜在脳とイメージの具体的な 関係性などの説明は、その後も全くないのです。複雑この上ない「ことばのイメージ」が、そんな安易なスプーンで掬い上げられるはずがないのです。
これらについてはすでに、評論家宮崎哲弥氏の書評(「諸君」04年10月号)や作 家山本弘氏のウエブの掲示板に酷しい批評があり、後藤和智事務所のHP[若者報道と社会]では、後藤氏がそれらをまとめて見事に論駁しておられます。心あ る方にご 一読をいただければと、《リンク》をさせていただきました。
後藤氏が指摘しておられるように、「音象」は何の知識も持たない素人に「潜 在脳」などというわけのわからぬ呪文をかけて目晦まししているだけのものなのです。 そのうえ、当研究所を訪ねるまで殆ど何も知らなかった「ことばにおけるイメージの存在」やその構造などの教えを直接うけた私を前に、と同書の中で、「この ような、 ことばの音のイメージ研究を行なった人は、これまで世界中どこにもいなかった。こ れは私が始めて行なった世界初の研究だ」など広言する。学術的にも、道義的にもあ きれた行為というほかありません。
単音だけでイメー ジが捉えられるのは限られたごく一部の音にすぎませんし、ことばがその奥深くに持っているイメージは、単音を成り立たせている調音種や音相基の重なり合い から生まれる表情や、いくつかの表情の響きあいが作る「情緒」などを総合することによりはじめて得られるものなのです。
―表情語は、矛盾したイメージも捉えてくる
お花見の季節です。なんとなく「さくら」という語を分析してみたくなりました。
オンソニック体験版で貴女も試してみてください。
満開の桜を思わせるような表情語『清らか、爽やか、庶民性、あたたかさ』が表情欄上位3項で見られます。そしてそれらをフォローするように「活性的、高級感、賑やかさ、溌剌さ」などが続いています。桜というモノの実態を見事に捉えたことばであることがわかります。
だがここで、疑問を感じられる方もあると思います。
それは表情解析欄に『現代的、都会的』があるのに、情緒解析欄には全く反対の『ひなびた感じ』がありますし、表情解析欄に『合理的、現実的』があるのに情緒解析欄には全く反対の『神秘的、哀歓』があることです。
そんなところを捉えて「だから音相分析はいい加減」などという人がよくいます。
だがこれは、この語が相反する2面を持っていることを捉えたもので、この分析が表情を緻密に捉えていることを示すものだといえるのです。
人にも明るいばかりの人、暗いばかりの人はいないように、1つのことばにも相反する2面、3面のイメージを持つ語が多いのです。
それらのすべてをとらえることで、はじめて音相分析の深みがわかるのです。
(飯田蛇笏)
桜と違い、季節外れな話題ですが、ふと気づいたことを、忘れぬうちにと書き留めてみました。
この句は改めて紹介するまでもない俳人飯田蛇笏の代表作ですが、「すすきの穂を折り取ったら、なよなよとして軽るそうな穂先に以外な重さを感じた、という意味です。
軽いものに用いる擬態語「はらり」という語の後に「おもき」を持ってきて「はらりとおもい」という絶妙な造語に、作者の意外な驚きぶりを見ることができるのです。
擬態語が発達した日本語ならではの表現法ですが、作者が感動したのは、そのことからものの命の意外な重さを知った驚きだったといってもよいでしょう。
また私がこの句に対し感動したのは、そうした句の心をこの語の音相が見事なベールで包んでいることです。
分析表の表情欄では、『暖か、鋭さ、充実感、特殊性、静的、清潔感、優雅さ』などを捉えながらそれらを露わに出すことをせず、低いポイント数に抑ているこ とです。そのような抑制の深さが、複雑度『5』(非常に複雑)を作り、情緒解析欄の『孤高感、クラシック、流動感』となってさらなる深みを作っていること です。
ことばの音が、意味の深さに重みを添えて伝えてくる…人々に感動を与える名句には、そういう実体が存在するのを私はいつも見るのです。
"「遊休商標」再評価のおすすめ
バブルの時代、各企業では将来出現する商品のため、社員を動員してネーミングを考案し商標登録する施策が各企業で行われました。
そうして登録された商標が、いま企業の金庫で、遊休商標となって大量に眠っています。その数は、消費財を生産している中、大手製造業では、1万語以上、数万語の社も少なくないといわれています。
そのような登録ブームの影響で、現在では新しくネーミングを申請しても不受理となるものが多く、中でも意味的要素が含まれている語は、登録不可能とさえ言われています。
企業では、登録された商標は社長室や知財部、総務部などで管理していますが、それの使用や運用は各事業部が行っており、事業部内で創案した商標は他事業部への融通すらほとんど行なわれていないのが実情です。
しかしながら、企業がこれらの商標権を維持するために、毎年どれほど費用がかかっているかご存知ですか。
それを、1万語を持つ会社の例で調べてみました。
特許庁ではあらゆる商品を、薬品、化粧品、食品、電気製品、コンピューター、自動車、出版など45の「区分」別に申請を受け付けます。
そのため申請を行う際は、その商品が属する「区分」以外にも同じ名前を申請しておかねばならないわけで、その数は45区分の半分くらいになるのが普通です。
このようにして、許可された商標は、10年ごとに権利の継続を申請しなければなりません。
その際の更新料は1区分151、000円ですから、仮に1万語を20区分に申請すれば、
1万語×20区分×151
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『心強いお便り有難うございました。
頂戴したメールは所員全員で拝読いたしました。音相研も力強い友を
得た思いです。今後とも 気楽にご投稿などいただき、日本語の深遠の
世界を、共に学んで行きたいと思っております。
どうぞよろしくお願い致します。
音相システム研究所 研究員 日紫喜友紀 』
◆ 醸造用資材規格協議会講話会
3月16日(水)におこないました。
「ネーミングの極意
─ブランドの価値は音相が決める」
(音相システム研・木通隆行)
【講演次第】
・音相とは何か
・現代人の音響感覚
・愛されることばとは
・「音相」はどのようにして捉えたか
・ネーミング製作現場での問題点
・その他
3月13日の産経新聞「正論欄」で社会学者加藤秀俊氏が、その昔、白瀬南極探検隊が到着した「大和雪原」の正しい読みは「やまとゆきはら」か、「やまとせつげん」かについて文献などを調査したそうです。
その結果、どちらも根拠があり間違いでないことがわかったそうですが、氏は『「せつげん」と音読みすると、荒涼とした寒々しい風景を想像し、「ゆきはら」と読むとふんわりした暖かさがある』と書いておられました。
このことを音相分析法でさらに掘り下げてみました。
オ ンソニック体験版で分析すると、表情解析欄で「せつげん」は高級感と派手さが主に表現され、「ゆきはら」は庶民的で爽やかな雰囲気を持つ語であることがわ かります。また情緒欄では、どちらも「情緒的、神秘的、大らかさ、寂しさ」などの雰囲気を持ちながら、「せつげん」には「夢幻的な不思議さ」が、「ゆきは ら」には「クラシックで鄙びた感じ」があると伝えています。
これらの語は、ポイントの置き方にやや違いはありますが、特性検出欄をみると、「せ つげん」の音価は〈−B1.4 H4.3〉でマイナスの高勁性語、厳しさや冷たさ、鋭さを持っているのに対し、「ゆきはら」は〈+B1.2 H2.6〉と プラス輝性で音野響きが弱いため、暖かくおだやかなイメージを作る音を持った語であることがわかります。加藤氏の直感はそれを正しく捉えたものであること がわかるのです。
―― 芙美さんからの便り
前号のこの欄にご紹介した、「芙美さん」から、つぎのお便りを頂きました。
『私のような若輩に、本当に心強いお言葉をかけて頂き、正直なところ驚きでいっぱいです。そしてとても感激しています。自分が尊敬し、憧れている研究者の方から嬉しいお言葉を頂いた喜びは、私の人生の中でこれからも輝き続けること間違いありません。
春に大学二年生になりますが、何を卒業研究で扱うかについてはまだ全く決まっておらず、現在の私自身の興味関心も、呆れるほど広範囲にわたっています が、私がどんなことを研究するにしても、そのテーマを捉えるひとつの視点として、音相論を足場に使わせて頂くことがあるのではと思っています。音相論の視 点で見ることの出来る分野の多さには、本当に驚かされますが、それよりも、今までそれがないがしろにされてきたことのほうが驚きです。
…と、実はまだ、私は音相の話にいたく感動し、涙して読ませて頂いているという「読者」の段階です。
音相論がもっと世の中に知られるように、私もがんばります!
木通さんのご研究がなければ、きっと日本語の有意義な研究は進まなかったと確信しています。その素晴らしい成果を頭上に見上げながら、それを使って日頃の疑問を解こうとしている人もたくさんいると思います。私もそのひとりです。
これからも、数多くの「探求者」たちのテキストとなり、杖となり、翼となる、面白く興味深いご研究や著作を、数多く世の中に出して頂けることを願っております。 北海道、芙美より』
国連の女性の地位向上委員会、3月4日の閣僚級会合で、ノーベル平和賞受賞者でケニア環境副大臣のワンガリ・マータイさんが演説し、日本語の「もったい ない」ということばを環境保護の合言葉として紹介し、「もったいない」は消費削減(リデュース)、再使用(リユース)、資源再利用(リサイクル)、修理 (リペア)の4つの「R」を表している」と解説して会場を埋めた各国政府代表者に「サーみんなで一緒に『もったいない』を唱和しましょう」と言って会場を 盛り上げたそうです。
(産経新聞、05年3月5日号より)
マータイさんの言う4つの「R」に流れているものを、表現すると、オンソニック体験版の上位にある表情語
『庶民的、適応性、動的、鋭さ、軽快感、合理的、現実的、清潔感、健康感』がすべてを捉えており、体験版には省略してある「情緒解析欄」では「鄙びた感じ、純粋、素直、クラシック」などをふくんだ語であることを示しています。
マータイさんは今年2月に来日されましたとき、「もったいない」ということばを聞いて感銘をうけたそうですが、日本語がその音相感覚が伝えているこの語の奥の深いイメージをケニア人のマータイさんが同じように聞きいて感動されていたのです。
「音相感覚は世界の言語に共通する」…私は多くの例からそんな実感を覚えるのです。
ことばの音のイメージを捉える音相理論の1部をまねた、「サブリミナル・インプレッション」という名の「ことば分析法」を書いた書物が出回っています。 一度テレビに「音相」(おんそー)とよく似た「音象」(おんしょう)の名で紹介されて以後、音相理論と同じものと誤解した記事をホームページなどで多く見 かけますが、これらのものは「音相」とはまったく無関係ななので、混同されないようお願い致します。
この説はことばの音のイメージを「あ、い、 う、え、お、か、き、く、け、こ、」など1つ1つの単音を対象に捉えるもので、「堺正明という名には「サ」が2音もあるから爽やかで「マ」音があるから女 性に好かれる名前」、「有田哲平は「タ」がたたく音、「ぺ」が唾を吐きかける音だから感じのよくない名」などというものです。
またこの説は、イ メージを単音単位に捉えるため「ガ行音はつかんで揺さぶるイメージ」があるなど、あいまいなことばでしか取り出すことができませんから、相手によっては、 それを「がめつい性格」とも言えるし、「学者のような追求型」とも、、また「喰らいついたら離さない性格」などと、どんな言い方もできるため、ことば遊び のようなものには使えても、ことばが奥深くで持っているその語固有のイメージなどを取り出すようなまともな研究ではありません。
そして、この理論は『潜在脳』の働きに結びつくものと述べていますが、『潜在脳』とは何なのか、それとどんなように結びつくのかなど、理論的に一番大事なことはどこにも書かれてありません。
ある識者のホームページで「この説で使う潜在脳は、素人を騙すただの呪文に過ぎない」と断言しています。
この種の説は、西欧では紀元前4世紀以後フィジス説として研究され、わが国では鎌倉時代に僧、仙覚が音義説の名で手がけ、江戸時代には本居宣長、鴨真淵、 橘守部などもいろいろ検討しましたが、客観的な根拠がないところから近代言語学の発達とともに姿を消していったものなのです。
「音象 (サブリミナル・インプレッション)は世界初の発見」などと宣伝していますが、この種の研究は洋の東西で何百年もの間、多くの学者が手がけて、見捨てられたものなのです。
正しいことばの表情(イメージ)は、どうしたら捉えられるか。
それはこのサイトの別項で述べているように、ことばの音が持つ調音種などから生まれる甲類表情や、甲類表情の重なり合いが作る乙類表情、さらにいくつかの表情語の響きあいから生まれる「情緒」を総合することで初めて得られるものなのです。