音相マガジン

3月の記事一覧

2004年03月24日(水)
106連敗「ハルウララ」は名付けのミス
2004年03月22日(月)
「Onsonic体験版」の注意事項    
2004年03月08日(月)
「音相」という語はどこから生まれたか
2004年03月03日(水)
「音相」へのご招待

3月の記事

2004年03月24日(水)
106連敗「ハルウララ」は名付けのミス

昨年暮れ、100戦100敗したのが新聞やテレビで話題になりました。このニュースは競馬ファンたちから暖かい励ましがニュースになっていましたが、一昨日この馬に名騎手武豊が乗ることとになり、ファンたちは朝2時から競馬場の馬券売り場にならぶという騒ぎもあったそうです。だが、武騎手が乗っても11頭中10着。

しかし、各紙はこの出来事を大きな記事で暖かく報じています。久々に見る日本人の心の温もりを感したすがすがしい今朝の空でした。

私はことばの音相という立場から、この「ハルウララ」という名前のことを思わずにはおれません。

馬主によると子馬のころ相当な暴れ馬だったので穏やかな性格にしたいとおもってつけたのだそうです。愛するゆえの名付けでしょうが、ネーミング技術の面から捉えると、これは明らかな命名のミスというほかないようです。

人の感情が動物にも伝わることは犬猫をみても明らかですが、とりわけ賢いといわれる馬の場合は、励ましや叱り声などにすばやく反応するそうです。

そのため昔から競争馬の名前には、存在感やバイタリティー、緊張感、スピード感などを感じる音をもつ名が多いのですが、「ハルウララ」はそういうイメージとは大きく違う音相をもつた語なのです。この語を音相分析したら次ぎのような結果が出ました。(ぜひ「Onsonic体験版」でお試しください)

この音は、穏やかで暖かく安定感や優雅さをわずかに捉えた語で、競馬馬には欠かせない「躍動感、個性、強さ、活性感」などをまったくもたないことがわかります。

このような穏やかで長閑(のどか)な音で毎日呼ばれていると、性格も円く平らなものになってゆき、闘争心や鋭さなどとは縁遠くなってしまったのです。

このように名前の音相は動物でさえその性格作りと深くかかわりがでるのです。

まして、人の赤ちゃんの名づけにおいておやですが、赤ちゃんの性格作りと名前の音相のことについては別に述べることと致しましょう。

2004年03月22日(月)
「Onsonic体験版」の注意事項

@解析されるのは「ことば」の表情の一部であることをご了知ください この体験版は分析工程の一部をご覧いただいているもので、ここに出たものがすべての評価ではありません。大事なネーミングをお決めになるときは、正規の分析を当研究所にご依頼されることをお勧めします。

A『複雑』とは何か 最近では「複雑」ということばを「陰険」や「意地悪」など、悪い意味に用いることが多いようです。この語には一部にそういう概念がなくもありませんが、元来この語は「単純」に対することばで、「優雅さ、高級感、知的」などの意味をもったことばです。そのため「複雑」は人間的な奥行きを持つ芸術家、文化人など、知的な仕事をする人の名前に多くでます。

B分析表の数値の読み方 分析表に現れる数字は、表情語相互の関係を見るためのものですから、他の語の表情語の数と比較しても意味がありません。また、数値が高いほうが良いというものでもありません。どちらかというと、前項で述べた複雑度の高い人などは高い数字の出ないことが多いようです。

C表情語の意味には幅があること 表情語はその周辺にある概念のことばを1語にまとめた抽象的なことばです。そのためそれらの中のどのことばを使うかで評価は大きく変わります。「安定」という表情語には「落ち着き」「冷静」のほかに「のろま」「愚鈍」ということばも含まれます。また、表情語には「暗い」「汚い」など、印象の良くないことば(ネガティブな語)が含まれていません。そのような語が1つでも入ると、それにとらわれて客観的な評価の妨げになることが多いからで、それらはすべて裏側に隠してあるのです。

D高ポイント語に注意 高ポイント語には「行き過ぎてしまう」不安が含まれています。「非常に明るい人」には「軽薄さ」のおそれもあるのです。そのことも考えに入れながら評価をしてください。また表情語はポイント数の高い方からだけでなく、低い方から読むことも必要です。上と下の両方から読むことで全体像がはっきり見えることが多いのです。 「音相理論」はことばの良し悪しを判定する理論ではありません。ことばの中に含まれている「表情」、言い換えれば「コンセプト」を抽出するものです。ポイントの高低だけでご判断なさらないよう、お願いいたします。

2004年03月08日(月)
「音相」という語はどこから生まれたか

真言宗の開祖、空海が書いた書物に「声字実相義」(しょうじじっそうぎ)というのがあります。

「声発して虚(むな)しからず、必らず物の名を表するを号して字という。名は必らす体を招く。これを実相と名づく」 事物がもっている実体とそれを表わすことばは一体のものだという「言事融即の説」を説いたものです。 声字とは記号的な言語ではなく、異次元の宇宙的存在エネルギーとしてのことばを指すもので、事物がもつ実体(実相)は、音声言語(はなしことば)で代表されることばによって示されると説いたものです。

「音相」は、このような背景から得たことばです。

2004年03月03日(水)
「音相」へのご招待

私がことばの意味と表情の関係を考え始めたのは、ラジオの放送台本を書く仕事をしていた昭和二十六年頃のことでした。

ラジオは音声だけですべてを表現しなければならないメディアですが、ことばの音とのそうした明け暮れの中で、ある事柄を印象深く伝えるには「意味」でことばを選ぶより語音がつくる表情(イメ−ジ)で選んだ方がよりよいことに気づいてからのことでした。

「桃色」と「ピンク」は意味は同じとみてよいですが、「ももいろ」という音には穏やかで落ち着いた表情があり、「ピンク」には輝くような明るさがあります。だから、赤ちゃんの頬は「ももいろ」よりも「ピンク」の方がその実感がよく伝わるし、老婆の頬は「ももいろ」の方がより印象的に伝わってゆくのです。

このような表情はことばの「音」から生まれるものなので、私はそれを「音相」という名で呼ぶことにしています。 音相は、同じ言語を使う人たちが同じように感じる感性といってよいでしょう。

音相理論は、ことばが作るの表情と音の仕組みの関係を音声学や統計学の手法を 借りて明らかにしたもので、ことばの科学がこれまで見棄てていた「感性」の部分を、新たな認識のもと再構築した理論です。

「表情」という面からことばを見ると、これまで気づかなかったものがいろいろ見えてきます。 例えば文学作品の題名や、使われている語彙や登場人物名などが、イメージ的に寄与している心理的、美的な関係などが捉えられますし、商品名を分析すると、その商品がどんなイメ―ジで客層に受け入れられているかがわかるなど、これまで論議の外におかれていた情緒や雰囲気などの実体が、客観的な尺度を使って解明できるようになるのです。

音相論は言語としての自立度が高く精緻な構造をもつ日本語にして初めて可能になった理論ですが、それはまた日本語美の奥を捉える新たな手法といってよいようです。

ここは、ささやかなサイトですが、日本語美を求める方々とともに、暖かく楽しい語らいの広場にしてみたいと思っています。 皆さんのご協力をいただければこの上ない喜びです。