12月の記事一覧
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12月の記事
冬至の季節になると、日野草城の柚子湯の名句が思い出されます。
「白々と 女沈める 柚子湯かな」(草城)
肌白の女性が柚子湯に入っている光景をとらえた句ですが、ここから伝わる何となくなまめいた風情は、いったいどこから生まれてくるのでしょうか。
それは文字によって意味的に伝わるもののほかに、音の力を無視することができないように思います。
ことばがつくるイメージ(幻影)は、その語にふくまれる音の要素(音相基)の組み合わせから得られるもので、「なまめかしさ」というイメージは、破裂音系 と無声音の使用を極力抑えることで生まれます。すなわち、これら以外の音、摩擦音・鼻音・流音と有声音を多く使うことで始めて得られるものなのです。
なるべく使用を控えたい音、破裂音系とは、貯めた息を破裂させて出す音で、「カ、タ、パ」行音(とその拗音)、無声音とは声帯を振動させずに出す「カ、 サ、タ、ハ、パ」行音(とその拗音)をいいます。この句は17音でできていますが、破裂音系は「ト、カ」の2音しかないし、無声音は「シ、ト、シ、カ」の 4音しかありません。これらの音が標準的に使われる割合は、破裂音系は音の数の28%(17音では4.7音)、無声音は47%(17音では8.0音)なの で、どちらの音も標準値の半分以下に抑えているのがわかります。
文章や俳句からうける情緒や得体の知れない感動は、このような音の工夫によって生まれるのです。
●「カローラ」と「ヴィッツ」(トヨタ車)
「カローラ」は、わが国で車ブームが起こったころに売り出され、世界で最も売れた車といわれていますが、99年に次世代の世界戦略車として登場したのがヴィッツです。
カローラの音相を分析すると、表情解析欄では高級車のイメージを作る優雅感や存在感以外のすべての表情語をゼロ・ポイントにしているため、純粋に追うべき ものだけを追った名前であることがわかります。また情緒欄以下では「夢幻的、神秘的、不思議な感じ、大らかさ」のほか、高級車らしい「中高年齢層向き」の 表現も見られます。
これに対し「ヴィッツ」は、「シンプル、軽快、溌剌さ、開放感」など「動」の面から「高級感、清潔感、暖かさ、爽やかさ、合理性、個性的」など「静」の面に至るまで幅広い表情を捉えていて、大衆車らしい万能性を表現しています。
カローラとは方向性が大きく異なる個性を持った語であることがおわかりでしょう。
あなたも体験版でお試しください。
日本人は外来語を受け入れるとき、それをそのまま受け入れず、日本語の風土を乱さないよう緻密な工夫を行いながら受け入れてきました。
たとえば「ロマンティック」という形容詞は、そのままの形で受け入れると日本語の言語体系が乱れるため、語尾に(な、だ)などの付属語(助動詞)をつけて 形容動詞として受け入れました。すなわち外国語の形容詞「ロマンティック」は、形容動詞の語幹、すなわち「名詞」として受け入れてきたのです。
この考えは漢語の音韻を受け入れるときも同じでした。
「京」(チン)や「北」「ピエー」という中国風の音韻はやまとことばにはなじまないため、「チン」は「きょー」、「ピエー」は「ホク」というように一字一字やまとことば風の音に翻訳して受け入れたのです。
このような工夫をしながら日本語の中で熟成してきた外国語は、外国語ではなく外国語にル−ツを持つ日本語の名詞と考えてよいでしょう。
先人たちは、外来語を日本語にない新たな概念を持つ語として受け入れながら、日本語の語彙を豊かにしてきたのです。
こういうことができたのは、開音節語という日本語の特徴によるものですが、美しい日本語を守るため、外来語の影響を最小限に喰い止めてきた先人たちの努力によるもので、その見識と知恵の深さには、ただ敬服するほかありません。
体験版から取り出された表を見て、表情が容易に捉えられる語と、捉えにくい語があるのにお気付きと思います。
これは音相分析の技術の不完全からくるものでなく、その語自体が持つ次のような特殊性から生まれるものが多いのです。
@意味だけで作られた語 (音への配慮がされていない語)
音相的な配慮をせず意味的なものだけを考えて作った語は、ほとんど表情を捉えること
ができません。
この種のものには、作語法が定められている学術用語、法律用語、一部の専門用語
なども含まれます。
(例:超、マジ、チョベリバ、ジコチュー、激辛、鎮魂歌、キャバクラ、ボキャ貧、UFJ、JR、
JA、ボナクア、デューダ、のぞみ、平成、B型肝炎、帯状疱疹、催告、許諾、禁錮 …)
A意味そのものが「曖昧さや不明瞭さ」をないようとしている語
曖昧な意味や、不明瞭な状態を意味にもつ語は、表情的にも曖昧さを表現していなけ
ればなりませんから当然、表情の捉えにくい語となります。
そのような語は、音相的には優れた語といえましょう。
(例:まぼろし、あいまい、おもろい…)
B複雑な内容を持っている語
陽と陰、強さと弱さ、静的と動的など反対方向を向く表情語が高点で対立してる語は
相反するイメージを同時にもっているため表情の捉えにくい語となります。
現実のことばの中にはそのような語が大変多いことを含んでおかねばなりません。
(例:ダサい、悪魔、NHK、三井、クーリッシュ、六本木、札幌、東京…)
人々の音響感覚が高度に発達した現代において、ヒットすることばや、ネーミングを作る上で何よりも大事なことは、その語や商品が持つ意味やコンセプトを、どんな音で表現したらよいかを捉えることといってようです。
あるイメージを訴えたいとき、語音の中にどんな音(音相基)を使えばよいか。それを、以後「シリーズ」で取り上げてみたいと思います。
今回は、次のテーマを取り上げることにしました。
●派手さ、明るさ、軽快感を作る音は何か●
―この種のイメージを表現するのに必要な音相基として次のものがあげられます。
・無声音が多いこと
(無声音とは、声帯を振動させずに出す音・・・カ、サ、タ、パ行音とその拗音)
・無声化母音が多いこと
(母音はすべて有声音ですが、一部の子音との関係から無声音の発音に
なるものを無声化母音という)
・無声破裂音系の音が多いこと
(声帯を振動させずに息を破裂させて出す音。カ、タ、パ行音とその拗音を
無声破裂音という)
・母音の種類が多いこと
(アイウエオ、5つの母音を偏りなく使っている語をいう)
・イ音が多いこと
(イ列音を多く使っっていること)
――以上の要件を多くもった例語に次のものがあります。
きらきら、てきぱき、ピカピカ、ひかり、輝き、パンチ、パチンコ、タッチ 、日立、
ペプシコ−ラ、SPA!
【注】これらの音相基は多用すると、次のような「軽薄さや奥行きや深みのなさ」を感じる
表情を作りますから注意を。
(例.軽薄、薄っぺら、軽佻浮薄、そそくさ、おっちょこちょい…)
1.「ロールス・ロイス」と「ベントレー」
○ロールスロイス
イギリス国王室御用立てのクルマ、貴族が乗るクルマとして古くから著名な名車です。
体験版で分析すると、表情語の上位に「安定感、信頼感、爽やか、清らか、充実感、高級感、優雅さ、高尚さ」などがあり、そういう雰囲気を十二分に表現した音を持つ名であることがわかります。
またこの分析表では省略してありますが、情緒欄には「情緒的、クラシック感、神秘感,夢幻性、孤高感」などがあり、コンセプト・バリュー欄では中高年齢層が好む語であることも捉えています。
そのほか、長拍化(音の数が多い)による存在感(堂々とした感じ)と、R、L音(流音)の多用が作るクルマらしい流動感がその隠し味になっています。
○ベントレー
ロールスロイスに次ぐ高級車でイギリスでは金持ち階級が乗るクルマといわれています。
そんなイメージを、表情解析欄の上位で「安定感、信頼感、高級感、充実感、高尚さ、優雅さ、静的、暖かさ」の表情語で表現しているほか、この分析表は省略してありますが情緒解析欄が「情緒的、人肌の温もり感、クラシック感、神秘感、夢幻性、孤高感」を捉えています。
ただ、ロールスロイスに比べると少拍(音の数が少ない)なため、存在感がやや低いなど、ロールス・ロイスとは一味違うものを見せているのがわかります。
――どちらも、優れた音相感覚を持ったことばといえましょう。
2.「E電」と「美肌」
○E電
国鉄時代、東京近郊を走る電車「国電」を、民営化する際改称したものです。表情解析欄を上から見ると、「シンプルな、派手さ、活性的、庶民的、個性的」と 明るくすっきりした方向性を持った語が捉えられ、それなりに合格点がつきそうに思えますが、この欄を下から読むと、この語がコンセプトとして表現すべき 「現代的、都会的、合理的、爽やかさ、進歩的、躍動感、新鮮さ」がゼロ・ポイントまたは、ごく低ポイントであるのがわかります。
そのため、新しく発足する企業体がもつべき意欲や、公共事業らしい存在感や信頼感など、大衆が期待しているものが全く表現されていないことがわかるのです。
この語は発表になったその日から,アナウンサーなども「旧国電」「JR線」などと読みかえていましたし、巷間でもこの語を使う人はほとんど見かけませんでした。
音相評価という点ではやや評価の難しいことばですが、それを直感的に正しく受け止めてその日から誰も使わなかった現代人の音相感覚の高さには、驚くほかありません。
○美肌
美しい意味と美しい文字を持ちながら、音の面では何となくぎこちなさを感じることばです。表情解析欄を高い方から見てゆくと、「充実感」「暖かさ」「優雅 さ」など、美的な表情を捉えてはいますが、「美しい肌」を表現するのにぜひ必要な「清らかさ」、「爽やかさ」、「新鮮さ」、「清潔感」、「明るさ」などが いずれもゼロまたはそれに近い低ポイントとなっていますし、体験版には出ていませんが情緒解析欄には「曖昧、ためらい感、不透明感」が、またコンセプトバ リュー欄には「にが味、重苦しさ」などの高点が、この語のネガティブな面を捉えています。
美しく感じるのは字面だけで、音が伝えるイメージは表面は美くしそうに見せながら、肌がざらざらになるような「醜」の面が含まれているのがわかります。
この語を、テレビなど聴覚媒体でほとんど見かけないし、人々の会話の中でもほとんど聞かれないのもそのためです。
しかしながら、厚化粧をして装った見てくれがあるところから、短期間で売り上げる一発勝負の商品や、ポスターや印刷物など視覚媒体でなら使えることばといってよいでしょう。
体験版で表情解析欄だけを見ると、事実と大きく違う評価になってしまうことを教えた例ともいえるでしょう。
――大事なネーミングは当研究所に正確な分析依頼をされることをお勧めします。
3.「金」と「銀」
金は銀の約10倍の値打ちのある貴金属ですが、そうした金属の価値とは別に、「金」を使ったことばには「金歯,金満家、成り金、金ぴか、金きら金」など、「モノ」至上主義がイメージされるネガティブなことばの中で多く使われています。
これに対し、金より格段に安価な「銀」を使ったことばには、「いぶし銀、銀の匙(さじ)、銀座、銀の鈴、銀河、銀馬車」など、高級、優雅で奥行き感をもったことばが多く、金にみられるようなネガティブな意味をもつ語は見られません。
「金」と「銀」には、一般にこのようなイメージの違いがありますが、そのようなイメージの違いを音相分析がどこまで捉えているかを見てみました。
あなたも体験版を使ってお確かめください。
表情欄をみると、金は「単純、大衆的、軽さ」がトップにあるのに対し、銀のトップは「高級感、充実感、安定感」などで、銀が捉えたこれらの表情語は「金」ではゼロポイントまたは、それに近い低位となっています。
――このことから、「金」と「銀」は、人々がこれらの語にいだいているイメージの違いを見事に表現した音相をもつ、大変優れた語であることがわかるのです。
Q 日本語と同じように 外国語でも音相理論は作れますか。(東京外語大、MM)
A
日本語で行ったと同じような方法で英語の音相理論、フランス語の音相理論などが作れるかどうかにちうて考えるとき、その言語の音節(拍)の数がどのくらいあるかが何より大きな問題となります。
日本語は使われている音韻のすべてが僅か138という音の単位(拍)でできていますが、英語の場合は拍数(音節数)は1800と言われたり、3000以上、いや1万以上あるなど、学者によってまちまちです。
音相論は拍数(または音節数)が表情把握の1つの単位となりますから、音節数が1800もあると、1800の表情を対象に捉えることとなり、そこからは極 めて漠然とした表情しか捉えられないからです。音相理論は、すべての音韻を少ない数に集約できた日本語にしてはじめて実現できた理論ではないかと思いま す。
金は銀の約10倍の値打ちのある貴金属ですが、そのような金属としての価値とは別に、「金」を使ったことばには「金歯,金満家、成り金、金ぴか、金きら金」など、「モノ」至上主義がイメージされるネガティブなことばの中で多く使われています。
これに対し、金よりはるかに安価な銀を使ったことばには「いぶし銀、銀座、銀の鈴、銀河、銀馬車」など、高級、優雅で奥行きのあることばが多く、ネガティブな意味をもつ語には例が見られません。
「金と銀」は、世上一般にこのようなイメージの違いがあるようですが、そのような微妙な違いを音相分析技術がどこまで捉えているかを調べてみました。
表情欄をみると、金は「単純、大衆的、軽さ」がトップにあるのに対し、銀は「高級感、充実感、安定感」などがトップになっており、銀が高位で捉えた表情語は金はゼロポイントまたは、ごく低位でしか捉えておりません。
このことから、金と銀は、人々がこれらの語にいだいているイメージを見事に表現する音相をもつ優れた語であることがわかるのです。
オンソニック体験版を使って確かめてみてください。
今週は、先日発表になった本年度「流行語大賞」の1つに選ばれたサントリー社発売の「伊右衛門」に、ライトをあててみました。
発売元、サントリーではこの商品について「普通のお茶と一味違った、さっぱりした味を狙った」とコメントしています。 制作者泣かせの複雑なコンセプトといえますが、それをこの語がどの程度まで表現でき、音相分析がどこまでそれを捉えているか調べてみました。 あなたも体験版でお試しください。
まず「お茶らしくないお茶をねらう」には、お茶と違ったドリンク的なムードがほしいことと、日本茶のネーミングでよく使われる表情語の使用をなるべく抑えることが条件となるでしょう。
表情解析欄を見ると、上位に「庶民的、にぎやかさ、シンプルさ、動的、強さ」などがあり「若さや庶民性や躍動感」が表現され、下位の方では、「お茶」を表現するのによく使われる「高級感、充実感、静的、清らかさ、高尚、優雅さ」などがゼロポイントまたはそれに近いところで並んでいます。
複雑なコンセプトを、見事に表現している佳品といってよいでしょう。 また伊右衛門という古風な名前の文字が、お茶の雰囲気を作っているのも見逃せません。